真言宗は加持祈祷(かじきとう)を尊重します。弘法大師はこの加持について次のように説いておられます。 “加持とは如来の大悲と衆生の信心とをあらわす、仏日の影、衆生の心水に現ずるを加といい、行者の心中よく仏日を感ずるを持となづく” すなわち、仏のお光が私の信心の水にはっきり映るように、おがんでいる自分とおがまれている仏が対立しているのではなく、仏と自分とがひとつになってしまった精神状態に入るという意味です。 祈祷とはいわゆる“お祈り”であります。祈りとは“忌み宣る(いみのる)”という意味ですから、心の汚れをなくしてから、願い事を申し述べるのです。この祈祷には自行(じぎょう)と他行(たぎょう)があります。自行とは行者が仏の教えによって即身成仏できるように祈ることであり、他行とは他人のために息災延命や家業繁栄の現世利益(げんせいりやく)を祈ることです。これらには次の四通りの法があります。 |
(1)息災法(そくさいほう) 国家社会の安泰を祈り、また病気などの一家の悪事災難を除き、無事息災に生活できるように祈る法 (2)増益法(ぞうやくほう) 人類の繁栄と社会の福祉増進を祈り、また個人的な事業の成功、一家の幸福を祈る法 (3)敬愛法(けいあいほう) 世界恒久の平和を祈り、人間関係では互いに尊敬しあい、皆が愛し合って、交際を円満にし、家族の和合を祈る法 (4)調伏法(ちょうぶくほう) 人類に害悪を与えるものを排除し、社会を毒するものをなくし、また自分の心中におこる不正な欲求の調整を祈る法 |
このような祈祷は弘法大師より伝わった厳重な秘法を修して、祈る者の至誠の発露のうえに如来の加持力が加わり、その上に社会や環境の援助が加わって不思議な霊験があらわれるのです。 |